はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆 6月度

2015-07-23 16:59:45 | はがき随筆
 はがき随筆の6月度入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【優秀作】14日「もってのほか」田中由利子(73)=薩摩川内市宮里町
【佳作】6日「今がベスト」永野町子(67)=鹿児島市武岡
   ▼18日「枇杷の思い出」伊尻清子(65)=出水市武本

「もってのほか」 エジプト旅行で知り合った人との長男の結婚が無事まとまり、山形の実家を訪ねた時の勘違いが内容です。「もってのほか」という言葉を連発するので、結婚に反対かと心配したら、それは料理の名前でした。長男の結婚を心配する母親の気持ちが、次に何が起こるかというドラマ仕立てに描かれていて、なかなか読ませます。
 「今がベスト」 人生には勉強したいという時がかならずある、という学生時代の先生の言葉は事実だった。ただ少し遅かったようで、勉強はしたいが、60歳を過ぎた今ではなにかと大変で、脳の働きをはじめ心身ともに疲れ切ってしまう。しかし今がベストだ。頑張ろうという、自己激励の内容です。読んでいて、気持ちの良い文章です。
 「枇杷の思い出」 自分でも気づかない初恋を描いた、美しい文章です。工事に来た若い大工さんに子供のとき親しくなった。その人が入院したとき、見舞いに行ったら、枇杷の実をもらったが、なぜか恥ずかしかった。今でも枇杷の甘酸っぱさを忘れない。こんなのいいですね。
 次に3編をご紹介します。
 堀之内泉さんの「ぷんか」は、3歳の子供の桜島観察が可愛らしく描かれています。そこに、桜島のように、たくましく美しい青年に育つようにという願いも込められています。
 高野幸祐さんの「いとおかし」は、80歳過ぎの同級生たちが集まって何かやっているらしい。聞いて見ると、自分の「はがき随筆」を批評し合っているらしい。友はありがたいものだ、これからも発憤しよう。私の同級生は、ネットで連句をやっています。
 堀美代子さんの「何かを伝えたい」は、危篤状態のご主人の枕元に家族が寄り添い、励ましの言葉をかけた。なぜか娘たちの声には反応しないが、自分の声には反応する。病室に野球のグラブが置いてあったせいか、ご主人が酸素マスクのままで、キャッチボールをしている夢を見た。人の意識の深層について考えさせられます。
  (鹿児島大学名誉教授 石田 忠彦)   2015/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載


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