妻は勤めに出て、一人家に残るのだが、寒いとどうしても自宅にこもる。猫に話しかけるが相手にされない。目を閉じ、椅子の背に頭をのせる。どうしたのだろう? ソプラノが聞こえる。自分で弾くピアノの音と競うように、放課後の音学教室で歌っていた中学時代の先生の声である。半世紀以上も眠っていた記憶が唐突によみがえる。
日は西に傾き、影を長く引くケヤキの向こうの教室。しばらくその記憶を楽しみ、追憶にふける。まだ音大を出たばかりの若い先生であった。もしかして先生に恋心を……我に帰り猫と目が合う。ちょっと照れる。
志布志市 若宮庸成(68) 2008/1/7 毎日新聞鹿児島版掲載
日は西に傾き、影を長く引くケヤキの向こうの教室。しばらくその記憶を楽しみ、追憶にふける。まだ音大を出たばかりの若い先生であった。もしかして先生に恋心を……我に帰り猫と目が合う。ちょっと照れる。
志布志市 若宮庸成(68) 2008/1/7 毎日新聞鹿児島版掲載
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