はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

子宝

2011-12-10 21:45:25 | はがき随筆
 貧しい農業で5人の子を育て父は20年前に亡くなり、母は、95歳となり老人ホームで余生を送っている。「貧しくてもわが家には子宝がある」が両親の口癖でとても愛情深く私たちを育ててくれた。そんな両親の一人残った母と暮らせる者は残念ながらいなかった。
 どんなに手厚い介護の生活でも、母には住み慣れた家ではないという決定的な悲しみがある。面会に行くホームの通路には入所者の絵や書が展示してある。その中に「子宝」と書かれた書がある。「また来るね」と母を抱きしめ、その書の前を私は逃げるように帰るのである。
  出水市 塩田きぬ子 2011/12/9 毎日新聞鹿児島版掲載

最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
田丸様ようこそ (アカショウビン)
2011-12-17 18:43:45
いつもコメント有り難うございます。
子が親を思う心
親が子を思うこころ
思いは、みな同じなのでしょうが、
その思いを叶えることの難しさを痛感します。
返信する
追伸 (広島県 田丸)
2011-12-16 00:49:24
しろがねも   くがねもたまも   なにせんに   まされるたから   こにしかめやも                        誰だったか忘れましたが、大昔の人が詠んだ歌にこんなのが無かったでしょうか。間違っているかも分りませんが、金銀宝石よりも、子供に勝る宝はないという意味だったと思います。ご両親にとって子供は、喜びであり、楽しみであり、生き甲斐であり、全てではなかったでしょうか。世の親という親は、皆そんな想いを持っていると思います。私を含めて・・・・・ひょつとそんなことが頭をよぎりました。
返信する
母の愛 (広島県 田丸)
2011-12-13 15:14:09
 私は、両親を亡くしてまだ日が浅いのですが、二人とも九十歳をこえていました。医者に言わせれば、九十歳をこえれば、単なる高齢者ではなく、超が付くそうです。            母のときは、六年近く養護老人ホ一ム通いをしましたが、病院に入っていた時より、安定して日々の生活をしていたように思います。家庭での介護生活も一年以上有りましたが、行き届かないことも多く、かかりつけ医からは、「限界」という言葉もありました。             今の私は、両親から受けた恩愛を返すことができなかったと思っています。でも、まだ元気だった頃に書いたのであろう、母の遺書的な書き物が出てきて、そこには、子供たちが何の心配もかけなかったとありましたが、私としては、多くの大きな心配をかけたと思っています。そこにも、大きな母の愛を感じ、涙する思いでした。     御母上様は、きぬ子さんが元気な顔を見せに行くことで大きな安心を得ていると思います。それが究極の親孝行と思います。
返信する

コメントを投稿