はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

1人の庭で

2009-07-05 22:00:59 | はがき随筆
 青葉が日々、色濃くなっていく。6月は底本の剪定の時期。私も少しずつ始めている。
 近ごろは体を動かす軽い庭仕事が好きになった。とはいえ、松の手入れだけはちょっと厄介だ。木はさして大きくないが、上の方は脚立を使わざるを得ない。
 82歳の老女、脚立から転落云々とニュースになっては大恥なので、まずは用心第一、命綱を幹にしっかり取り付ける。これで直接の落下は免れようが、ぶら下がりの醜態と枝の2、3本は犠牲にするかも。
 一昨年の秋までは夫の作業を手伝う程度だった。夫は挟い庭に多すぎるほど木を植え、ほとんど茂るに任せていたので間引きを主張する私とは始終言い合ったものだ。
 そんなけんか相手も昨年逝き、庭は早々と私の思い通りにさせてもらった。結果、待望のすっきりした庭に変わりはしたが……。
 「何とまあ、切りまくったものよのう」
 そんな夫の文句が聞こえて来そうである。
 整理した数本の切り株から新芽が盛んに出てくる。取っても取っても執念のように次々と。いじらしくもあるが、伸ばすわけにはいかない。「ごめんね」とわびながら、こちらも負けずにせっせと摘み取る。
 1人往まいの私の庭。自分の手で、あとどのくらい維持できるだろうか。
 今、アジサイが花盛り。
  山□県下松市 坂口 敏子・82歳 2009/6/29 の気持ち掲載
写真はネロさん

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