はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

南天

2014-12-29 21:36:02 | はがき随筆
 退院の度に優しさが増し、寄り添う心も深く強くなった。庭木の花を愛し、梅、ツバキ、ツツジなど、果ては着生ラン、千両、万両と庭造りに余年がなかった。こつこつと築いた石垣には、夫の姿が彷彿とする。ある時、生け垣にと、南天を植え付けた。それが繁茂し、やぶとなり厄介だという私の意向に、夫は苦笑しながらモダンなフェンスに替えてくれた。
 隅に追いやられた南天が近年、赤い実をたわわに付け、濃緑の葉に映え、美しさが際立つ。正月用にと生けてみる。「きれいねえ」。きっと、照れて笑うあなたに、また会いたくなった。
  出水市 伊尻清子 2014/12/24特集版-2

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