私の働く店では赤飯、餅、おはぎなどを作っている。毎年春にヨモギ摘みがある。急斜面の土手や草やぶに分け入り重労働ではあるが、新芽を摘む快感は疲れを忘れさせる。ウグイスの声を聞き満開の桜の下や、川のせせらぎに添ったり、きらめく海を眺めたりと心弾むのだ。
摘んだヨモギは従業員総出で選別し洗い、ゆで、絞り、茎などを除き臼でつき、さらに細かい繊維を取り、春の香りが冷凍保存される。手間ひまかけたおいしいヨモギ餅ができるのだが、今年で店は閉められる。ふくよかな母の手のような店がなくなるのはとても残念である。
出水市 塩田きぬ子 2012/5/9 毎日新聞鹿児島版掲載
おそらく、日本一の味だと思います。
その老舗が無くなることは、とても淋しいことです。
とても残念です。
文章で、そこで働いていた人の情景と豊かな心が伝わってきました。
本当に有難うございました。
美しい野山の自然の材料で素朴に頑固に三代に亘り、造り続けられたヨモギ餅の店が無くなるのかぁ~と思えば淋しいですねぇ。
西郷隆盛は明治新政府の役人達が名誉や金や私利私欲に走り過ぎて、自分も堕落しそうになったので『まともな人間は素朴で美しい自然の中で我を取り戻せる』と明治六年に役人を辞めて鹿児島に帰って来ました。
自然で素朴なヨモギ餅や赤飯やおはぎは西郷隆盛の教えを思い出させるような自然の食べ物だったのに残念です。
人生は金や名誉や私利私欲ではなく、『愛と美しい自然と命をつなぐだけの生活の糧なんだよぅぅぅ』と教えてくれるような素朴で優しい食べ物でした。