手に取った郵便物。中の1枚にはっとした。福岡の施設に入所して3年になる母からだ。これまで折に触れ便りを書いた。しかし何の反応もなかった。
「私のことは心配しないで。心を込めてお世話して下さい」。体が不自由になった夫のことを書き添えて出した、新年のあいさつ状への返信だった。虫がはったような弱々しい字。以前と変わらぬ母の気遣いが、私の胸を熱くも悲しくもさせる。
かすれた字は「福寿」か? 北国育ちの母が、雪を割って顔を出すフクジュソウの愛らしさを楽しげに話したことがある。季節の移ろいも忘れていない。
宮崎県日南市 矢野博子(72) 2022.3.18 毎日新聞鹿児島版掲載
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