小豆色の枝先に黄緑や赤紫の新芽を出して花を咲かせるヤマザクラが好きで、山口県に住む弟の山で、新芽の色が違う9本のヤマザクラを運び、弟と鉢に植えた。自宅の車庫の軒下に並べて10年たつ。が、花はまだだ。葉陰に椅子を置いてよく読書をする。特に雨の日などしみじみとして格別である。
「おっ!」。先日、藤沢周平短編集で「山桜」を見つけた。読後、人生を回り道した女性、野江の心情の明暗と一枝のヤマザクラの花の姿に、苦しみ屈折していたわが青春の日の光と影が一瞬、フラッシュバック、しばらく涙は止まらなかった。
出水市 中島征士 2014/7/8 毎日新聞鹿児島版掲載
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