61歳で倒れ、右半身重度まひ。孫子と平穏無事に暮らそうとした初老の妻はその時、人生の全てを失った。16年間みてきたが、体力の限界を感じ「すまん」と思いながら施設にお願いした。施設に残し、別れに人知れず目頭の潤むのを覚えた。それから26年、87歳。施設の暮らしも10年が過ぎた。語らいも笑いもなく、心通う潤いもない砂漠に呻吟起居する妻の病状は静かに進行。誰かも分からず、ただ生命があるだけ。子供もそれぞれ安定してこれからこそが本当の人生であったが、一瞬にして暗闇に転落した妻。限りない不憫の状、その果てを知らない。
鹿屋市 森園愛吉 2014/8/9 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿屋市 森園愛吉 2014/8/9 毎日新聞鹿児島版掲載
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