プレハブの選挙事務所。初めて会ったとき、彼女はトイレ掃除をしていた。駐車場でオーライを繰り返していると、さっとお茶の準備をするのが彼女だった。立候補者が車から降り、椅子にぐったり倒れ込む。私がうちわであおぎつつ次の遊説地を指し示す。細い指が冷水のコップを手渡していた。応援に駆けつける人々。大皿には真っ白いおむすびが並ぶ。壁いっぱいに貼られた必勝の墨書。ベニヤ板の床は雑踏でたわんでいた。投票日の夜、静かに去りゆく人々を見送る彼女の潤んだ瞳。それはウインクしたままのダルマの色と同じであった。
出水市 山下秀雄 2017/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 山下秀雄 2017/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載
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