アパートの4階まで駆け上がり、外から声を掛ける。「おばさん、久野です。学生の時お世話になった久野です」。45年ぶりに東京都豊島区千早町の和田ふじ子さん宅を訪ねた。丸顔に丸眼鏡のおばさんは、当時10人ほどの学生の面倒を見た。時まさに学生運動の真っただ中。キャンパスは日々ロックアウト。マージャン、パチンコ、酒に明け暮れた。ラジオからは千賀かほるの「真夜中のギター」が流れていた。「体調を崩して施設に入ったって……」。そう告げられる。もうこの世では会えないだろう。おばさんとわが青春に一礼して、その場を辞した。
霧島市 久野茂樹 2012/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載
霧島市 久野茂樹 2012/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載
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