はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

宇宙空間下駄歩行

2017-09-12 05:30:36 | はがき随筆
 妻のみやげの下駄にはガッカリした。値は高い。が、下駄の歯は差し歯ではない。接着剤で付けてあり歩いても音が悪い。
 梅雨明けの早朝、その下駄でゴミ出しに行く。クマゼミの声を聞きながら歩く。足裏は心地よいが、音はさっぱりダメだ。カラン、コロンと鳴らない。右はもうヒビ割れていて、低い音、左はやや高い音だ。音痴下駄の伴奏でゆっくり歩く。と、鋭い鳴き声でヒヨドリが流星のように眼前を横切る。ここは宇宙空間だ、とイメージしながらゆっくり歩く。腹いっぱい空気を吸いながら歩く。頭上でのんびりしたカラスの声――。
  出水市 中島征士 2017/9/9 毎日新聞鹿児島版掲載

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