はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

祖母との家路

2014-09-24 06:27:44 | はがき随筆
 「おばあちゃん、上を見たら歩けるよ」と、私は祖母の手を引いた。二人で親戚の家を訪ねて遅くなった。駅からの夜道は木々が生い茂り、真っ暗闇で上空が少し明るかった。
 私は父を早く亡くした。子供の頃は病気がちで祖母は一睡もせず看病してくれた。戦時中、祖母は婦人会で講演をしており、その会場や陸軍病院の慰問に就学前の私を連れて行った。
 祖母は家に友人たちを招待し、興に乗ると皿踊りを披露した。よく手紙を書いたが、晩年、目が見えなくなり、私が代筆した。あれから70年、祖母と歩いた家路を思い起こしている。
  鹿児島市 田中健一郎 2014/9/20 毎日新聞鹿児島版掲載

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