「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の切なさよ」
昔のラジオドラマのナレーションである。90歳を目の前にして、このことばの重さを今更のようにかみしめる。
40代の頃、小松原庸子さんのフラメンコに憧れて、まずは体操教室に入った。戦争のさなかに育った体はすぐに足首を痛め一度もタップを踏むことなく挫折した。
フラメンコは夢に終わったけれど、タップの激しいリズムは、文章の歯切れの良さにも似て随筆の糧になるかも。と、また夢を見る。
熊本市東区 黒田あや子(89) 2021.10.30 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます