はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

女眠る、春遠からじ

2019-02-22 19:55:25 | はがき随筆
 夜中に目覚めたら外が明るいので、障子を開けると頭上に月とオリオン座が煌々と輝いている。まさに山も眠るの静けさ。
 寒さも忘れて眺めていたら、宮沢賢治の「やまなし」を思い出した。蟹の父子がつましく暮らす山奥の渓流を包むかのように照らす神々しい月である。
 「やまなし」は貧しくても待てるものがある幸福を描いた賢治の傑作である。
 部屋には家族のインフルエンザで避難して来ている孫娘と妻が熟睡している。ママに会える日まであとしばらくである。
 今日はもう大寒、春遠からじの感である。
 宮崎市 杉田茂延(67) 2019/2/21 毎日新聞鹿児島版掲載

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