Kさんの庭にはいろいろなミカンが植えられていた。おなかをすかせた学校の帰り道、熟れた黄の色はまぶしく輝いていた。小学校3年生の時だったと思う。いつも登下校が一緒だった4人が、1個ずつだったらよかろうと盗みに入った。
1個のつもりが3個、4個と手を伸ばしていると、背後からKさんの怒鳴り声。足をすくませた私たちは横一列に並ばされ、それぞれの父親の名前を言わされた。
それから1人ずつ交代に歌を歌わされた。私が歌ったのは「みかんの花咲く丘」。一瞬、Kさんの怖い表情が崩れた。
伊佐市 清水恒 2012/9/4 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます