ここには笛や太鼓の応援はない。投球と同時に息をのむ。その静寂の中で打球音だけが響く。夜空に舞い上がった白球は総立ちの観衆を確かめるように弧を描いて右中間のスタンドに消えた。同点で迎えた九回2死からイチローが放ったサヨナラホームランである。
ヤンキースタジアムで大リーグ観戦が夢だった僕達にイチローからのプレゼントだと思う。
さらに周囲の観衆がハイタッチを求めてやって来る。グラウンドではイチローがもみくちゃになっていた。時計は0時を指そうとしていて、夢のヤンキースタジアムで夢を見ていた。
志布志市 若宮庸成 2013/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は若宮さん提供のヤンキースタジアム
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