「かわせみ」「どこ?」「こっち来て、あそこ」。いた! 皇族だけがお渡りになる石堤の上に。
るり色の小さな鳥と目が合った。「バイバイ」と言ったかどうか。それくらいのゆとりを見せ、かわせみは川向こうの深々とした木立へ姿を消した。
「大きな鯉がいる。彼は鯉を狙っていたんだ」「あんなにちっちゃいのに無理」「冷蔵庫にしまっといてね、少しずつ切って食べるつもりだったんだ」
おかしなおとぎ話だと笑いながら見上げると、空が天真爛漫なこの人の心を写して青く澄み渡っていた。
鹿屋市 伊地知咲子 2011/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます