はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

記念樹

2013-10-21 19:45:37 | はがき随筆
 腕を組み一つ葉の大木を仰ぎ見る夫の姿をよく見かける。
 祖父は定年を迎えると木に凝り、タブやケヤキを手に入れ独身の夫と家を建てたという。
 嫁いだ時、人目を引くくほどの一つ葉は池に影を映し錦鯉は一層鮮やかに泳いだ。和む庭に満足そうだった祖父。孫に喜び、命名しながらも病には勝てず、私の誕生日に亡くなった。
 今年の夏、我が家のシンボルの木が見事に枯れてしまった。さてはうわさのチョウの仕業なのか? 見守り続けてくれた記念樹なのに……。もうすぐ祖父の五十回忌。たたずむ夫の思いが伝わってくる。
  薩摩川内市 田中由利子 2013/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

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