夫の葬儀の日のこと。家族はすることが山のようにある。関係機関との諸連絡、葬儀社との打ち合わせ。私は全部息子に任せた。その中には列席者への食事の手配がある。通夜の後の食事で、何の手違いか十数人分足りないことが分かった。彼は頭が真っ白になった。
「どうしよう」。傍らにいた甥たちに相談したその時、親戚のおばさんが大きな容器に山のように料理を詰めて抱えてくるのが見えた。「助かった」。彼はほっとして腰が萎えそうになった。皆さんへ十分食べてもらえる量だった。彼は言う。「これを地獄に仏というのだな」
宮崎市 海汐千乃(85) 2020/4/18 毎日新聞鹿児島版掲載
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