はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

彼女は宇宙人

2016-07-06 05:45:51 | はがき随筆
 間もなく86歳になる彼女は、体は丈夫だけれども自分の家が分からなくなったり、夫が他人に見えたりして時々宇宙人になってしまうことがある。認知症といっても、不安でたまらない彼女は私に救いを求めてくる。
 彼女夫婦には四十数年前に、20歳を過ぎたばかりの一人息子を交通事故で亡くした悲しい過去がある。そのどん底から救われたのは、寺で聞いた親鸞の教えだったという。住職は代わったが、宇宙人になった彼女の頼るところは今でも寺なのだ。彼女の不安はどうしたら癒されるのか。話し相手をする私の心はいつも悶々として悲しい。
  志布志市 一木法明 2016/6/25 毎日新聞鹿児島版掲載

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