あの山も、この山も少年時代は野焼きがあった。その後に生えた蕨折りはとても楽しかったなあ、と思いながら生まれ育った里に着いた。もしかして、と思い足を運んだ。茅と木立が茂っている。あった、あった。太く長い蕨たちが拳を天に突き上げ、自己主張している。枝も葉もない。何という幸運。しばらく眺めていると、昔、源氏に追われた平家の公達の宿命を思った。様変わりした自然に住処を追われた蕨たちが、こんな狭い場所で優雅に生き延びていたとは。蕨たちに申し訳ない思いで、ポキッポキッと折った。たちまち買い物袋いっぱいになった。
霧島市福島 楠元勇一(79) 2006/4/25掲載
霧島市福島 楠元勇一(79) 2006/4/25掲載