春の入学シーズンになると頭に浮かぶ。4人弟妹の長子である私に期待も大きく、うれしかったのか、入学祝に父が私には不釣り合いな高価な万年筆をプレゼントしてくれた。当時は若気の至りで、無愛想な返事しかできなかった。入学準備に負担も大きかったであろうに、あのとき素直に喜べなくて、悔いが残る。寡黙な、今は亡き父の優しさに気付くのが遅すぎた。今だったら心から「ありがとう」と言えたのに。万年筆はボールペンに取って代わり、細々と何かしら書き続けられていることに感謝し、研鑽を積んでいけたらと思うのだった。
鹿屋市 中鶴裕子 2017/4/29 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿屋市 中鶴裕子 2017/4/29 毎日新聞鹿児島版掲載
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