はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

晩秋のある日

2013-12-17 20:55:45 | はがき随筆
 76歳。いつ、何があってもおかしくない。かかりつけの歯科医院の隣に葬祭場ができた。「見学できます」の張り紙に、治療の帰りに寄ってみた。
 係の方に案内していただき、パンフレットをもらって帰った。中規模で一日一つの葬儀。家から近いのもよい。雅楽が縁で結ばれた娘夫婦には竜笛を奏して送ってほしい。娘は涙で吹けるだろうか。いろいろ考えていると、不覚にも涙が出た。
 「死は古い着物を脱いで新しい着物に着替えるようなもの」。またこの世に出直してくる。明るい展望がある。涙を拭って夕げの支度にとりかかった。
  鹿児島市 内山陽子 2013/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載

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