子どもの頃の食卓は、今ほど食材が豊富でなかった。その分、季節ごとの物を口にしていた。と言っても、野原や山林に生えた物だが。幼いながらツワブキやツクシの煮物が好きだった。
ツクシ採りは秘密の場所があった。国鉄と私鉄の電車が間近に並んで走る、線路沿いの土手だ。緑の雑草の中に、小指サイズの薄茶色のツクシが並んでいる。一本一本を丁寧に抜き、買い物かごに入れ持ち帰った。
毎年のように母は「どこでこげん採ってきたんね」と尋ねた。「あの土手たい」と口を濁す。線路際では遊ばないようにと、きつく言われていたからだ。
鹿児島市 高橋誠 2014/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載
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