はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆8月度

2017-09-22 19:26:29 | はがき随筆
 はがき随筆の8月度月間賞は次の皆さんでした。
 【優秀作】29日「薄翔天牛」堀之内泉=鹿児島市大竜町
 【佳作】2日「海外旅行」高橋誠=鹿児島市魚見町
  ▽18日「干しブドウ」畠中大喜=出水市高尾野町

 「薄翔天牛」は、夜間昆虫採集で採ったウスバカミキリなどの昆虫が、多くの白い卵をうみつけて翌朝には死んでいた。子供さんはその産卵に驚いたが、自分は、人間の育児と違う昆虫の成長過程を考えさせられたという内容です。確かにちょっとしたことから、生命現象の不思議については考えさせられます。天牛をカミキリと読むのも不思議です。
 「海外旅行」は、昭和30年ごろでしょうか、テレビを見ながら海外旅行の話を一家でしていると、いきなり祖父がソ連に行ったことがあると言いだし、家族を驚かせた。でもそれは、シベリア出兵のことだと、祖母が種明しをしてくれたという内容です。海外派兵を官費旅行だとシャレて
言いましたが、家族で戦争の歴史を話合うことも少なくなりました。
 「干しブドウ」は、戦時中徴用工の父親が、職場でもらってきた干しブドウの味が忘れられず、今でも店先の干しブドウを見かけると立ち止まるという内容です。この干しブドウの味には、戦争、窮乏生活という時代の影が染みついているから、ひとしおでしょう。
 中島征士さんの「古釘と少年」は、子供の頃は古釘も大事にして、集めておいて何度も使った。妻が、畑で五寸釘を見つけてくれたのを見ていると、少年の日がセピア色に思い出されるという内容です。過去を呼び起こすきっかけには興味深いものがあります。
 一木法明さんの「玉音放送」、昭和20年8月15日の終戦の日、ラジオから流れる玉音放送の記憶です。多くの戦死者も空襲も敗戦も今では忘れ去られようとしていますので、このような記憶は語り続けるべきだと考えます。
 秋峯いくよさんの「出会い」は、羽田空港までのモノレールで感じのいい若者たちと乗り合わせたという内容です。自分はフィリビン慰霊の旅のことを、青年の一人は知覧の記念館の特攻隊員のことを話し、話題は暗かったが、これからを背負う好ましい青年たちに出会えた快い旅でした。
  鹿児島大学名誉教授  石田忠彦

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