傘寿を迎えた冬の暖かい日、ぶらりと中央駅に出掛けた。ざわめく人混みの中をゆっくりと泳ぐように歩いていると、「アトガナイ」「アトガナイ」と行司の声がどこからともなく聞こえてきたような気がした。
そうだ後がないのだ。私は果たしてあと10年生きられるか自信がなかった。構内を行き交う人の波は、私が歩いていることなど頓着せずに、忙しく何かを求めるように過ぎていく。
「ノコッタ、ノコッタ」。また行司の声が聞こえた。そうなんだ残ったんだ。昨日、級友の訃報に接した私は、気を取り直して町へ急いだ。
鹿児島市 野幸祐 2012/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載
そうだ後がないのだ。私は果たしてあと10年生きられるか自信がなかった。構内を行き交う人の波は、私が歩いていることなど頓着せずに、忙しく何かを求めるように過ぎていく。
「ノコッタ、ノコッタ」。また行司の声が聞こえた。そうなんだ残ったんだ。昨日、級友の訃報に接した私は、気を取り直して町へ急いだ。
鹿児島市 野幸祐 2012/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載
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