はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

2007-06-23 08:21:17 | はがき随筆
 私の同級生に魚取りの名人Kがいた。Kは幼いころから父の後を追い、川に入り甲突川の流れ、瀬、よどみ、深さなどを熟知していた。また春夏秋冬、それぞれの四季の味覚を川から届けたくれた。その中でも得意技は新緑の頃の鮎釣りだった。解禁数日前から、鮎の姿を岸から探し求め、吊り場のポイントを確認していた。特製の釣り針を作っていたようで、毎年他の釣り人よりも漁獲量が多いことを誇っていた。帰途には初鮎の篭を提げて立ち寄ってくれ、釣果を談笑するのが初夏の恒例だった。芳香な鮎の思い出を残したKの五年忌が、この夏にやってくる。
   鹿児島市 春田和美(71) 2007/6/23 毎日新聞鹿児島版掲載

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