はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

夜霧のブルース

2017-06-22 18:12:09 | はがき随筆
 桜が散り青梅がふくらんだ頃、田舎に住む兄が誕生日とあって鹿児島に出てきた。
 「何を食おうか」「テンプラがいいな」と2人の足は駅前の居酒屋に吸い込まれた。
 「テンプラに焼酎!」
 メニューも見ずにカウンターに座った、中折帽の毛色の変わったじじいたちに驚くおかみには目もくれず、したたか飲んで食って店を出ると、駅前の夜霧はもう赤く光っていた。
 「夢の四馬路か虹丘の街か」
 上海にでも行った気分か、肩組み合ってふらふら歩く80半ばのこの2人、まで当分天国には行けそうもない。
  鹿児島市 高野幸祐 2017/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載

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