はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

毎日ペンクラブ鹿児島・2008年度総会

2008-05-19 22:08:42 | 毎日ペンクラブ鹿児島




 毎日ペンクラブ鹿児島・2008年度総会が、18日、鹿児島市勤労者交流センターで開催された。午前の部は、2007年・年間賞の表彰式、午後はペンクラブの総会ということで、久しぶりに会う投稿仲間たちの和やかなひとときとなった。
 表彰式では、阿久根市の松永修行さんに、平山千里・毎日新聞鹿児島支局長からお祝いのトロフィーが贈られた。この日誕生日を迎えた松永さんは「今日は大安で大潮。とてもめでたい日になりました」と喜びを語り、会員からの拍手に応えていた。その後、選者の吉井名誉教授の選評を支局長が紹介し、併せて投稿のコツなどをアドバイスした。
 午後の部、毎日ペンクラブ鹿児島の2008年度総会は、新年度の活動方針などを熱心に討議し、新会長に岩田昭治さんを選び散会した。

会いたい

2008-05-19 21:17:13 | はがき随筆
 私は迷っていた。連休は母の元へ帰ろうかと。福岡までの距離が、年とともに少々苦になる。
 82歳の母は働き者。腰は曲がっているがよく動く。花好きで掃除草取りは名人だが、料理は苦手。「食べてあげるから腕をふるってね」とのたまい、私は笑いながら台所に立つ。口は元気だが体の弱りと一人の暮らしが気になる。「八十路はキツイねえ」の本音も。
 先日、弟より届いた封筒にA4判の母の写真。父の眠るお寺の満開の桜。毎年、庭に群れ咲くノースポールが……。
 やっぱり帰ろう。
 「会いたい」
   井尻清子(58) 2008/5/18 毎日新聞鹿児島版掲載

モラル

2008-05-19 21:09:48 | はがき随筆
 長野市の聖火リレーを論じる最中、市街地に並ぶプランターのチューリップを背広姿の男性が傘の柄で打ち払う映像に憤慨したのは私だけではあるまい。
 食べ残し「使い回し」の報にさらに驚く。知らず疑わず多くのなじみ客から高い料金を受け取る老舗の商魂。先代の「もったいない」の心を守っているという主人の声にあぜんとする。
 ペットボトルや缶飲料の薬剤混入や今も残る偽装問題などなど。現代社会の変ぼうを憂い、道徳教育が強調されているが、並行して大人のモラル高揚を急がねば、世界に軽べつされること必定である。
   薩摩川内市 下市良幸(78) 2008/5/18 毎日新聞鹿児島版掲載

電話

2008-05-17 06:55:33 | はがき随筆
 奥の間で書類の整理をしていた時、電話のベルが鳴った。はて、こんな時間に誰からだろうかといぶかりながら受話器を耳に当てた。「おめでとう」と一言、先方の弾んだ声が鼓膜に心地よく響く。名乗らなかったが、聞き慣れた声ですぐさま北九州市のH氏とピンと来た。
 雑誌の文芸欄に拙文が入選したことを告げてくれた電話だった。氏は二十数年来の趣味の知己である。用件が終わった後も心を和ませてくれる会話が弾んだ。相手の迷惑も考えずつい長電話になったことをわび、心からお礼を述べて静かに受話器を置いた。
   霧島市 有尾茂美(79)2008/5/17 毎日新聞鹿児島版掲載

蛍の夕べ

2008-05-16 21:38:25 | アカショウビンのつぶやき
 I病院は、鹿屋市街中心部に近い距離にあるが、清流に囲まれ自然豊かな環境の中に建っている。
 この病院で毎年GWに開催する、「蛍の夕べ」は地域の恒例行事となり病院の入院患者はもちろん、併設された老人施設の入所者にも喜ばれている。
 「今年のイベントは終わったけれど、今夜は気象条件も申し分ないので見に来ない」と、施設に勤務するMさんからお誘いがあった。

 施設に着くと、Mさんは、ベッドに伏す入所者の方々に蛍を見て頂くため、職員が考案したユニークな仕掛けをゴロゴロ押しながら、部屋を巡回していると言う、まずそちらにお邪魔してみた。

 照明を切り、「よく見ててね、光り始めますよー」とMさんが、蛍の入った網に霧吹きで水を吹きかけると、「ピカーッピカーッ」と、一斉に光り始めた。
「きれいじゃなぁ」「幻想的だねえ」「ほたるを、見がなって、よかったぁ」と口々に喜びの声が上がる。わざわざ起き上がって見ようとする方もあり、感動の様子が伝わってくる。

 今から14年前のある夜の出来事を思い出した。
 召される一月前…という厳しい状況の中にあった夫は、I病院の訪問看護士・Tさんの献身的なターミナルケアを受けながら自宅で過ごしていた。
 5月7日夜、「今日は病院で《蛍の夕べ》があったので、Nさんにも見て頂きたくて持ってきました」と、蛍籠を持った小学生の坊ちゃんと一緒に、Tさんが来てくださった。籠から飛び立った蛍は、部屋のあちこちで光り、私たちは言葉もなくその美しい光に見入っていた。やがて一言「きれいだね、これで最期かな」と夫は静かに言った。「来年、もう一度見ようよ…」と答えながら、私の声は震えてくるのだった。そして6月15日、彼は静かに旅立った、蛍の思い出は切ない。

 ようやく外が暗くなった、蛍が一番集まると言う場所に行ってみると、うわぁ!いるわいるわ…。
数え切れないほどの蛍が、「ピカーッピカーッ」と一斉に点滅を繰り返し、フワーッ、フワーッと飛び交っている。同行したKさんは、FMラジオの取材のため、マイクを向けながら楽しいおしゃべりが続いている。カメラを担いだ人も大勢集まってきた。このすばらしい夜を、Mさんに感謝しながら、私たちは、やがて家路についた。




空の向こう

2008-05-16 07:29:57 | はがき随筆
 夢を見た。
 彼女は笑みを満面にたたえ、何か言いたそうにしていた。そのほほ笑みの深さを、2日後に知った。
 声が聞きたかった。少しでも話がしたかった。老いた両親のこと、大切な息子のことをいっぱい抱きかかえているくせに、いったいどういうつもり?
 5年前からの病が、53歳の彼女の命を奪ってしまった。
 5月のこの空を見上げると、彼女があまりに遠くに行きすぎて、それが歯がゆい。
 空から涙のひと滴ぐらい落としてごらんよ。受け止めてあげるから。
   阿久根市 徳丸伸子(54) 2008/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ぞうりと私

2008-05-15 11:29:27 | はがき随筆
 私の名前は曾祖母からいただき、父が名付けてくれた。
 「靴は買ってもらえなかったが、わらぞうりだけはたくさんあった。由井ばあちゃんは愉快な人だったよ」
 昼間は畑仕事、夜はぞうりを楽しそうに作っていたそうだ。早世した息子や、孫の行く末を思いながら、時を忘れて編んだことだろう。
 私もぞうり作りが大好きだ。
 今年は「ねんりんピック」が鹿児島で開かれる。私たちの老人クラブも、手芸作品の展示に参加する。来場者にミニ草履をプレゼントしようと、せっせと編んでいる日々。
   阿久根市 別枝由井(66) 2008/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載

ありがとう友よ

2008-05-14 08:16:31 | はがき随筆
 嫁に6年目にして待望の二人目が宿り、小2の孫娘も小躍りして喜んだ。が、ひどいつわりが始まった。息子の精いっぱいの手料理が今一のようだ。
 季節の旬を届けてくれる友がいる。今年も堀たての柔らかいタケノコが届いた。くしくもその日、息子からSOSの電話が来た。妻が頂いた初物のてんぷら、煮物、酢みそあえ、タケノコご飯で食卓を飾る。
 皆で「うまい」の大合唱。嫁も食欲が進む。おなかの子も母の久しぶりの喜びを感じたことだろう。タケノコみたいにすくすくと成長してほしいものだ。ともに感謝いっぱいの夕げだった。
   肝付町 吉井三男(66) 2008/5/14 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はさん

孫の成長

2008-05-13 21:15:36 | はがき随筆
 鹿児島市少年空手道大会が県体育館であった。日ごろの練習の成果を、と小学4年生の孫も出場した。
 同じ日、6歳の弟のサッカーの試合があり、その応援へ出向いた娘のもとに、勝ち進んでいく空手道会場からのメールが届き、興奮する。娘は「行かないで」と涙の弟を置いて、応援に桜島から駆けつけた。急ぎ電話をもらった私もタクシーを飛ばし、決勝戦を応援した。
 微熱、頭痛をおしての準優勝は立派なものだった。
 「継続は力なり」と、県大会へのさらなる意欲を見せる、孫であった。
   鹿児島市 竹之内美知子(74) 2008/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載

07年はがき随筆年間賞

2008-05-13 18:29:14 | 受賞作品
年間賞に松永さん
 07年「はがき随筆」年間賞に阿久根市大川、松永修行さん(81)の「充実の一日」(昨年10月27日掲載)が決まった。表彰式は18日午前10時半から、鹿児島市勤労者交流センターである。松永さんに喜びの声を聞いた。【馬場茂】
母校の運動会、鮮やかに描写
 「立派な賞を頂くことになり、うれしいやら驚くやら……」。少し照れながらも顔をほころばせる。
 受賞作は母校・大川小が舞台。50歳を迎えた大人たちが小学生と健脚を競う同市恒例行事「華の50歳組」運動会だ。〈児童の足が黒光りして〉の描写が示す細やかな観察眼、的確な表現力が評価された。「子供たちは毎日暑い中、よほど練習したんだろうと足を見て分かったんです。人数も少ないから大人より何回も多く走らされ、大変だったねえ、と」
 学徒通信兵として知覧の陸軍部隊で終戦を迎えた。「特攻基地にいたのに出撃を知らなかった。極秘だったから。同年代が見送る人も少ない中、死んでいった」。戦後、福岡外事専門学校(現・福岡大)で学び直し、40年近くの北薩の中学で英語を教えた。
 妻を亡くした4年前の夏、庭で羽が傷ついたセミを見つけた。このままでは死ぬ。羽をテープでくっつけ枝に戻した時の様子を描いたのが掲載第1作。「たとえ小さくても、命がとても大切に感じられたのでしょうか」
 少年時代から本好きで、今も図書館で月10冊以上借り、ジャンルを問わず読破する。日課は好きな詩吟を朗詠しながら近くの渚を裸足で歩くこと。足の裏で水温上昇、地球温暖化を感じるという。
 「若い時見えなかったことが年を取ると見えてくる。題材はたくさんあるのに書く時間がなくて」。旺盛な好奇心と鋭い観察眼の持ち主は、表彰式当日、82歳の誕生日を迎える。
 
持ち前の感性光る
 [評]
 松永さんは、母校と思われる阿久根市・大川小の運動会に参加しました。
その時、元気な子供たちと青々と長く伸びたヘチマが目に飛び込んできたのです。そのことを「出迎えてもらった」と感じました。いいですね。持ち前の感性で文章を表現しました。〈児童の足が黒光りして〉と細やかに描いています。
 プログラムの内容は、児童たちや〈華の50歳〉を迎えた卒業生、地域住民の総参加の様子を、分かりやすくしかも映像でも見ているかのように鮮やかに映し出しています。
 松永さんはこの日の運動会を〈特筆できるイベント〉とまとめました。少子社会の子どもたちへ、力強く元気に育つことを期待しています。今のせわしない世の中で「充実の一日」を味わう、まさに幸福の一日でもあったのですね。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

年間賞作品
 充実の一日
 10月7日、大川小の運動会に参列した。68人の元気な児童と2階まで伸びたヘチマが出迎えた。9時、紅白の応援合戦がエール交換で開幕。本年は酷暑の中、児童の足が黒光りしていた。かけっこ前に名前を呼ばれて挙手する姿がほほ笑ましい。阿久根市が誇る「華の50歳組」運動会は昭和44年卒と45年卒が午前、午後に分かれて実施。児童との追いつ追われつ、韋駄天ぶりを存分に発揮。趣向を凝らし、地域住民総出の大声援の中、学校史に特筆できるイベントだった。大川っ子も脚力、総力がついたことでしょう。この感動を明日の糧にいつまでも!!
阿久根市大川 松永修行(81)

戦友忌

2008-05-11 14:52:18 | はがき随筆
 庭の八重桜が果てて葉桜となり、今年もまた5月13日が巡ってくる。
 私が訓練を受けた飛行学校では、寝台の両隣を戦友と呼んだ。戦友とは一心同体ですべての事にあたる。思いは兄弟以上だ。飛行学校での基礎訓練を終えてそれぞれの進路へすすむ。私は加古川へ、戦友は菊池へ配置された。笑顔の別れだった。
 その菊池教育隊が昭和20年5月13日、敵機動部隊の波状攻撃を受けて少年兵など37人が戦死し、私の戦友も犠牲となった。15歳だった。日本陸軍史上、最年少の戦死者だと思う。
わが戦友永久(とわ)に十五の八重桜
   鹿児島市 福元啓刀(78) 2008/5/11 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はさくらさん

春を惜しむ

2008-05-10 07:45:24 | はがき随筆
 青い空に八重桜のピンク、コデマリの白い花、紫の藤の花、白藤、夫の自慢のエビネ。
 中でも一番元気の良いのはジャスミンの花。2㍍四方に伸び、小さな花をびっしり付けている。その下を通ると、肩にやさしくふれる。しばし、さわやかな気分に浸る。
 そばの鉢にチューリップがぽつんと1本、赤い花を自己主張している。
 青梅は、小粒ながら50個ぐらい。夫の好きな梅酒になろうかと出番を待っている。
 グラウンドゴルフ帰りの夫の笑い声が響く。この美しい春を惜しみつつ、自然を満喫する。
   出水市 橋口礼子(74)2008/5/10 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はオフイスさん

ジャズ再入門

2008-05-09 07:37:48 | はがき随筆
 六十過ぎてジャズ再入門。ガイド本をあさりCDを厚め、生活の各場面で楽しんでいる。
 20歳の時に鴨池体育館で聴いたアート・ブーイキーの余韻が引力となり、NHK「美の壺」のジャズサウンドが後押しした形だ。ジャズの魅力はリズムと即興演奏。ベースとドラムが刻む正確な4拍子は疲れた脳をキックし、即興演奏には心も体も揺れる。おはら節のノリとはふた味は違うが、静かに聴き入った時の解放感はたまらない。
 前期高齢者のカミさんは名曲「ウオーターメロン・マン」がかかると躍り出す出すようになった。いいことですよね。
   出水市 花園勝政(65) 2008/5/9 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はnobminさん

さがしもの

2008-05-08 21:08:43 | アカショウビンのつぶやき
 『返事して くれないかしら さがしもの』という、万能川柳がずーっと昔、毎日新聞に載ったことがあった。

 その当時から毎日捜し物をしていた私は「発信器でもつけとけば、ピーピー返事してくれるんだけど…と、つぶやくと「お母さんは、一体、幾つ発信器をつければいいんだ…」と夫にいわれてしまった。全くその通り、失せものは、数限りなくあるんだもの、みんなに付けたら、部屋中で一斉にピーピー鳴り出すかもしれない。
 でも、私みたいな人もあるらしく、生活雑貨をネットでしらべていたら、ありました。

 その名も
さがしもの発見器』。
 失せものナンバーワンはめがね。めがねにじゃらじゃら受信機をぶら下げる訳にもいかないし…。やっぱりチェーンでぶら下げるほかないか。
 後期高齢者に近づき、認知症気味の私には、朝から晩まで捜し物をして脳の活性化をはかるしかなさそう…。

生命

2008-05-08 19:42:38 | はがき随筆
 うなりをあげる刈り払い機を左右に振りながら草を刈る。逃げまどう虫たち。お遍路さんが四国巡礼で手に持つつえの先の鈴は、虫をふみつぶさないためのものといわれるが、こちらはそれどころではない。冬の間死んだふりしていた雑草が、家の周りに繁茂するのだ。
 それにしても雑草の生命力は見習うべきだ。地下に根を張る植物の力強さはどこからくるのか。生活習慣病など無縁ではないか。そして今年も梅や柿の老木が花を咲かせ実をつけた。小生、ひと花咲かせるには年を取りすぎたが、せめて雑草や老木に負けずに力強く生きよう。
   志布志市 武田左俊(65) 2008/5/8 毎日新聞鹿児島版掲載