病院の待合室は満席だ。ドクターが私服のカッターシャツで現れた。「あっ、右袖の肘あたりが破れています」とつぶやくと「気にしないで」と病室へ行った。待合室の患者は不思議そうな面持ちで見た。今の時世に敗れた服は際立ち人の目を引く。滑稽にも映るがドクターは「気にしないで」と大胆に患者に接する。1枚のシャツを大事に着用することに頭が下がる。この珍事での笑いに待合室の患者さんの心が和み感謝。ドクターのまなざしには暖かい初冬の日差し。救急病院の診療が終わり、ドクターの顔にはほっこり感が。
鹿児島県姶良市 堀美代子(77) 2021.11.13 毎日新聞鹿児島版掲載