絵話塾だより

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2020年12月12日(土)文章たっぷりコース第3回目の授業内容・高科正信先生

2020-12-13 16:47:25 | 文章たっぷりコース
先日、高科先生のところに旧友から20数年ぶりに連絡があったそうです。
その人とは先生が教員をしていた時からのお付き合いで、今は年賀状のやりとりくらいしかしていませんが、
昔は一緒に研究会をしたり公私に渡って仲良くされていたので、思い出してくれる人がいて嬉しいとおっしゃっていました。
いつも授業の冒頭で、先生の近況報告のようなお話から始まるのですが、これは今学んでいる「話にブリッジをかける」ことに通じるのだそうです。



今日はまず今期のテキスト『書く力』(池上彰・竹内政明/朝日新書)をを順番に読んでいきました。

・読者に展開を予想させないテクニック〜たくみなブリッジのかけ方

著者の竹内氏による「編集手帳」を例にとり、書き出しで読者の興味を引き、それがどこに繋がっていくのか分からないようにして興味を持続させ、
最後に一番言いたいことに着地する、序・破・急の構成を見ていきました。
読売新聞の「編集手帳」や朝日新聞の「天声人語」は新聞社の顔ですので、作者の力量が問われることになります。
そのためにはたくさんの要素をストックとして置いておき、ここぞという時に取り出して文章をつなげることが必要になります。
竹内氏のコラムには何かの文章が引用されることが多いですが、気の利いた一節を引用するためには幅広いジャンルの文章を読むしか術はありません。
哲学者の鶴見俊輔は、気に入った文章があると抜き書きして取っておいたといいます。
今ならスマホを使う人も多いでしょうが、自分にとって胸に届いたものは書き写して保存するようにしましょう。
そうすれば記憶に留まり、読み返すこともできます。
例えば、哲学者の鷲田清一さんが朝日新聞に連載している『折々の言葉』の中で、
毎日放送のアナウンサー西靖さんのお父さんの言葉を紹介していたそうです。
「人と違うことをして目立つのは誰でもできる。人と同じことをして秀でなさい。」
文章を紡いでいく受け皿の容量を広げるためには、とにかくいろんな文章を読むのが良いでしょう。

そして、向田邦子さんの『男どき 女どき』(新潮社)から、例文を見ていきました。
テキストで学んだように、書き始めから興味を引き、どんな展開になるか想像できないままどんどん読み進み、
最後に「なるほど!」と思える巧みな構成になっています。



文章を上達させるには、良いと思う文章を書き写すことも練習になります。
作者が「、」や「。」や改行をどのようにしているかを知れば、その人の文章のスタイルが分かってくるからです。
良い本だなあと思ったら、ぜひ書き写したり、音読して文章のリズムを知りましょう。
絵本でも、良いと思うページにトレーシングペーパーをかけて、上から絵と文字の構図をなぞって描いたりすると
どこが良いのかが分かってくるでしょう。

次はトーべ・ヤンソンの『ムーミン谷の冬』(講談社)のあるシーンの挿絵を見て、
思い浮かぶ物語を10分ほどで書いてみました。




書いた後で発表したのですが、皆さん同じように感じるところや全く違う発想があったり、
中には短時間で壮大な物語を書き上げる人もいて、それぞれの物語の世界が興味深かったです。
物語を作っているのは、情景描写と登場人物の心情描写です。
通常は文章が先にあってそれに合う挿絵を描きますが、今回はその逆で、暗く塗り込められたムーミンの絵から何を読み解くか
勉強になりました。これは良いトレーニングになりそうです。

上の写真でムーミンの挿絵の左側にあるのは、朝日新聞の掲載された中条省平氏の「マンガ時評」で、
吉田秋生氏の新作『詩歌川百景』が紹介されています。


※『ムーミン谷の冬』の最新版は表紙絵が違います

これを参考にして、次の課題は「わたしのすすめる一冊の本」について書いてきてください。
小説でもエッセイでも紀行文でもマンガでも、ジャンルは問いません。今回は文字数も自由です。
自分のお気に入りを人にすすめて、読んだ人が興味をそそられて読みたいと思ってもらえるように書いてください。



そして最後はまた本からの引用でした。
べバリイ・クリアリーの『ヘンショーさんへの手紙』(あかね世界の文学シリーズ) から
子どもが作家のヘンショーさんに「どうしたら本が書けるようになりますか?」と手紙を書いたら
その返事にこう書いてあったそうです。
「よく見なさい。よく聞きなさい。そしてよく考えなさい。それから書き始めなさい。」



物事に目を凝らし、聞き耳を立て、そのことについてよく考えて、それから書き始める。
このクラスではそれをいろんな方面からやっていきます。
今日は挿絵に文章をつけてみましたが、それもその一つです。
やっているうちに “ブリッジのかけ方” も分かってくるでしょう。とのことでした。

次回は句読点の打ち方を勉強するので、今回配った資料を忘れないようにしてください。
よろしくお願いします。

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