【カスパー】
作 ペーター・ハントケ
演出 ウィル・タケット
2023/3/28 東京芸術劇場シアターイースト
19世紀のはじめ、
生まれてからおよそ16年間、
地下の牢獄に閉じ込められていた
孤児で実在の人物、カスパー・ハウザーが題材の舞台。
わずかのセンテンスしか知らない彼は教育を受け、
文明社会に適合できたかにみえるが、その後暗殺されたという。
っていうことを何も知らずに観に行くと、
何を言ってるお芝居なのかまったくわからないのではないかと思った。
事実、私はちょっと予習していったので、何をしているのかがなんとなくわかったけれど、
一緒に行った友人は、「内容はよくわからないけど、寛一郎さんに引き込まれた」と言っていた。
カスパーを演じた寛一郎さんが、何も知らない赤ん坊のような表情で、
赤ん坊の泣き声のように同じセンテンスを繰り返すうちに
徐々に言葉を覚え感情を訴えるようになっていく様子が子供の成長を早送りで見ているよう。
体の動かし方、物の名前、使い方・・・
なにもかもが大人になってから初めてっていうのはどれだけ不安なんだろう。
おどおどしたような目の動き、表情からそれが伝わってくる。
お前は~、お前は~、お前は~、と
たたみかけるように観念的な言葉を浴びせ続けるプロンプター(教育係?)の3人の声や言葉がきつくて辛くなる。
教育がまるで洗脳か拷問のように見えてきて、なんだか見ている方が苦しくなった。
「おまえ」というワードをこんなに不快に感じたことは今までないかもってくらい。
言葉や文明を知ってその中で生きていくのがはたして幸せなのかどうか、とさえ思えてくる。
プロンプターを演じるお三方(首藤康之・下総源太郎・王下貴司)の声がとても良くてよく通り、
一番前の席だったというのもあり、空気感がダイレクトに伝わってきたせいかもしれない。
舞台では暗殺されるところまではいかなかったけれど、
彼の人生って何だったんだろう、とじわ~っと後からこみあげてくる。
私が寛一郎さんを初めてみたのはテレビドラマ。
ヒロインをつけまわす(のちに味方になる)謎のカメラマンだったと思う。
背が高くて不思議な雰囲気の人だな、と思っていて、
佐藤浩市さんの息子さんってことは
この舞台の時に一緒に行った友人に聞くまで知らなかった。
ってことはおじいさんが三國連太郎さん。
祖父や父がこれほどの大物だと、いろいろご苦労もあることと思うけれど、
とても存在感のある素敵な役者さんだと思う。
観劇後は池袋東武の地下の甘味やさんで、季節限定お花見あんみつをいただく。
友人はまめかん。
ちょっと難しいお芝居で疲れた脳が甘いものを欲しがったのかも
美味しくいただきました
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