戦前の「昭和史」研究は、専門化が進み、日進月歩状態といってい
いのかしらん。
昭和の軍人の研究最先端をまとめた筒井清忠編『昭和史講義【軍人
篇】』(ちくま新書、2018/7刊)を読む。
中では「石川信吾」がおもしろい。
石川信吾(1894-1964)の『真珠湾への道』(昭和35[1960]刊)
については、今年になって読んだばかりだ(→こちら)。
石川信吾が「対米戦争に持って行ったのは俺だよ」と公言していた
ことは有名だ。--石川は、海軍省・軍令部を横断する組織として
設置された国防政策第一委員会のメンバーだった。
最近の学界の研究によると「第一委員会(あるいは石川)が海軍部
内の思想を統一し、南部仏印進駐や開戦へと導く原動力となった」
という評価は修正を要するという。
本稿を執筆した畑野勇によれば、対米英回線をめぐる石川の主導性
について、現在でも評価が一定しない理由の大きなものは、石川自
身が遺した一次史料が乏しいことにあるという。
やはり「回顧録」というものは、すべて100%信用できるものでは
なく、その裏付けが必要ということかしらん。
今さらながら、「人の評価」は難しい?
勝海舟が言うように、人にも相場があり、「上がった相場も、いつ
か下がるときがあるし、下がった相場も、いつかは上がる時がある」
(『氷川清和』)のかもしれない。
筒井清忠編『昭和史講義【軍人篇】』(ちくま新書)★×5
帯の写真は石原莞爾と山本五十六。
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