筒井清忠『戦前日本のポピュリズム』を読む。まことに良書だ。
7月30日のブログで、司馬遼太郎「昭和の中の魔物」を取り上げ
た。--「日露戦争の勝利が、日本国と日本人を調子狂いにさせ
たとしか思えない。ここに大群衆が登場する」。
筒井の問題意識は、上記司馬と共通するものがある。
まえがきより
話は基本的には大正末・昭和初期から始まるが、日本において初めてポピュ
リズム現象が登場した日比谷焼き討ち事件(1905年9月)についてはやや詳
しく扱い、そこから叙述を始めることにせざるをえなかった。理由は読めば
おわかりいただけると思う。
明治末の1905年から日米戦争開始の1941年までが36年間、普通平等選挙制成
立の1925年からだと16年間の歴史となる。これを長いと見るか短いと見るか、
読者自身で考えてもらいたいと思って本書は書かれる。
繰り返しになるが、本書はまことに良書で、「36年間」の主な事
柄と、ポピュリズム、マスメディアの関係が、一次史料も引用さ
れながら整理されている。
例えば、戦前の「右傾化」のポイントの一つは、昭和5(1930)
年のロンドン海軍軍縮条約と統帥権干犯問題だ。
『現代の日本史A』(山川出版社)によれば、
これ(注:ロンドン海軍軍縮条約)に強い不満をいだいた海軍の強硬派や国
家主義団体は、浜口内閣が海軍軍令部の反対を押し切って軍縮条約を結んだ
のは統帥権の干犯であるとして、激しい非難をあびせた。
本書第5章統帥権干犯問題と浜口雄幸内閣では、上記教科書では
数行の問題が、かなり詳しく記述されている。--この章だけ
でも読む価値あり。
ロンドン軍縮条約に対する、海軍内の賛成派と反対派(加藤海軍
軍令部長、末次軍令部次長)のごたごたが新聞で報道される中、
4月3日、『大阪毎日』は「統帥権干犯というような問題を生ずる
場合もあるべく・・・・・・枢密院でこの点が重大な問題として取扱わ
れるであろうと見られている」と報道(このような書きぶりは今
の新聞にも散見される?)。
筒井は、
これが「統帥権干犯」という用語の初出と言われる。
と書いている。
衆議院で、政友会の犬養毅と鳩山一郎が、統帥権干犯だと政府を
攻撃したのは、それから3週間後の4月25日である。
その後・・・・・・加藤海軍軍令部長は、財部海相に無断で、6月10日、
天皇に辞表を提出。天皇は無言だったので、加藤は動揺する。
11月14日、浜口首相は国家主義団体の佐郷屋留雄に狙撃され、重
態に。
(注)佐郷屋は死刑判決後、恩赦で無期懲役に減刑。その後、仮出所。戦後も右
翼運動を続け、昭和47(1972)年に亡くなった。
本書には「日米戦争への道」という副題が付いているが、日露戦
争~太平洋戦争間は、満州事変一つを取ってみても、日比谷焼き
討ち事件で登場した「大衆」(主に明治生まれ)が後押しした面
がかなりあったのかもしれない。
(参考)
7月31日のブログでも紹介したが、小泉信三も
日本では、日露戦争以後において大学その他学校教育を受けたものの数が激
増し、書籍の数が激増し、参政権を持つものの数が激増した。これほど良い
事が重なったのであるから、日本国民はよほど賢くなっていなければならな
かった筈である。それが前古未曽有の愚かな事をした。これはどうしたこと
だろう。
と書いた。
筒井清忠『戦前日本のポピュリズム』(中公新書)★×5。
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東京オリンピック
このところ、一日中オリンピックを視聴で1kg以上太る(笑)。
〇陸上男子200m:残念ながら3人とも予選落ち。
〇男子100mH:2人が力まず軽く飛んで予選通過。立派!
〇男子サッカー:さすがスペインは基礎的なトラップ上手い。
押され気味(2点ぐらい入りそうだった。)だが、前半を0対
0で終わる。ワンチャンスを生かせるか?
57分スペインのPKはビデオ判定で取消。スペイン交代先に
動く。後半のポゼッションはスペイン。85分まで0対0。
結局延長戦。三苫と前田出る。日本の守備〇。延長前半も0対
0。またPK戦?残り5分、バックの寄せ甘く、一瞬のスキに
1点取られる。さすがスペインは強かった!
日本、次はメキシコ戦。
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