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木村光彦『日本統治下の朝鮮』  (長文)

2020-03-11 05:00:00 | 近現代史

日本史の教科書として定評のある『詳説 日本史』(山川出版社、
2019)のp296に、

 日本政府は憲兵隊を常駐させるなどの準備のうえに立って、1910
 (明治43)年に韓国併合条約を強要して韓国を植民地化し(韓国
 併合)、・・・・・・(略)。
 総督府は、地税賦課の基礎となる土地の測量、所有権の確認を朝
 鮮全土で実施したが(土地調査事業)、その際に所有権の不明確
 などを理由に広大な農地・山林が接収され(注)、その一部は東
 洋拓殖会社や日本人地主などに払い下げられた。

 (注)これによって多くの農民が土地を奪われて困窮し、一部の
 人々は職を求めて日本に移住するようになった。
とある。
(注)日本史の教科書は、ほぼ同様の記述となっている(写真参照)。



一方、李栄薫編著『反日種族主義』(文藝春秋、2019)p35には、
 1960年代以来、中・高等学校の韓国史教科書は、総督府が実施し
 た土地調査事業の目的は、朝鮮農民の土地を収奪することにあっ
 た、と教えて来ました。
 1960年、歴史教育学会が作った教科書は、農地全体の半分が国有
 地として収奪された、と記しました。1967年、ある教科書は、全
 国の土地の40パーセントが総督府の所有地として収奪された、と
 記しました。当時までは検認定教科書だったので、教科書によっ
 て少しずつ内容が違っていましたが、1974年から国定教科書に変
 わります。
 その後約36年間、ですから2010年までの韓国史教科書は、土地調
 査事業によって全国の土地の40パーセントが総督府の所有地とし
 て収奪された、と学生たちに教えて来たのです。ところが、どの
 研究者も40パーセントという数値を証明したことがありません。


これに関連して、呉善花『韓国併合への道 完全版』(文春新書、
2012)p228には、

 確定された朝鮮全土の土地は1918年末で442万町歩、うち朝鮮人所
 有地391万町歩、国有地27万町歩、日本人所有地24万町歩だった。
 このうち、所有権者不明で官所有地と判定された12万町歩、所有権
 の申告がなかったり所有権者不明の土地2万7000町歩を総督府が接
 収した。この総督府が接収した土地は全体の約3パーセントにあた
 る。

 最大の日本人地主は農地開拓を目的に設立された東洋拓殖株式会社
 であり、1920年代初等に約7万3000町歩の農地を地主経営していた。
 同社は土地買収を推し進め、終戦時には25万町歩の土地を所有して
 いた。



最近読んだ木村光彦著『日本統治下の朝鮮』(中公新書)p41には、
 従来植民地収奪論の立場をとる研究者は、同事業(注:土地調査事
 業)の結果、多くの農民が土地を失ったとして、この事業を強く批
 判してきた。その主張によれば、農民は、書類作成に不慣れであっ
 たり、場合によってはこの事業に知らされることがなかったため、
 土地所有権の申告手続きができなかった。こうした無申告地や村落
 共有地は国有地に編入され、その後、農村内外の有力者(旧来の朝
 鮮人地主層や内地人)に払い下げられた。しかし近年の研究は、農
 民多数が土地を喪失したという事実はなく、この主張が誤りである
 ことを明らかにしている(李栄薫『大韓民国の物語』79-85頁)。


原史料というか一次史料を確認しているのは誰かしらん。
ウィキペディアもご参照→こちら




木村光彦『日本統治下の朝鮮』(中公新書、2018)



『詳説 日本史』と呉善花『韓国併合への道 完全版』


私がチェックした日本史の教科書


李栄薫編著『反日種族主義』


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2 コメント

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Unknown (tkgmzt2902ちゃぐまま)
2020-03-11 15:59:56
韓国の博物館に行ったとき、「教科書の変遷」が開催されていましたが、そこには絶対にはいらないようにと、入り口にガイドさんが見張っていました。その内容を見てみたいと狙っていましたが、隙はありませんでした。
返信する
Unknown (katsura1125)
2020-03-11 17:15:56
ちゃぐまま様、韓国には行ったことはありませんが、「貴重な情報」をありがとうございました。またお気軽にお立ち寄りください。
返信する

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