人生ブンダバー

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服部龍二『高坂正尭』

2020-03-15 05:00:00 | 読書

「満洲事変」をウロウロしていたと思ったら、本を整理している間
に服部龍二先生の本に移行してしまった(笑)。

『大平正芳』に続き、『高坂正尭--戦後日本と現実主義』(中公
新書)を読む。

京大法学部教授高坂正尭先生は、平成8(1996)年に惜しくも62歳
で亡くなられた。

高坂正尭を知ったのは、昭和40年代後半--1970年代のNHK討論だ
った。学生時代には何冊か読んだが、ほとんど忘れてしまった(笑)。
また読み直すと、学生時代とは違った感想になるのかもしれない。


服部龍二著のよる「高坂正尭」の評伝を読み、あらためて整理した
が、高坂の師弟関係をさかのぼると、高坂→猪木正道(1914-2012)
→河合栄治郎(1891-1944)となる。

猪木に言わせれば、「高坂は飛びぬけた天才」だったという。

父親の高坂正顕(1900-1969)はより難しいかな?


本書は高坂正尭の評伝であると同時に、国際政治(「戦後日本と現
実主義」)、さらには理想主義と現実主義について考える書である
と言えるかもしれない。


理想主義(かくあるべし)は答えがほぼ一つであるのに対し、現実
主義とはある一定の条件の下にあるいくつかの選択肢からベターな
ものを選ぶ行動と言えるのではないかしらん。



いささか余談だが、昭和25(1950)年ごろ、サンフランシスコ講和
会議を前にして、ソ連を含む全面講和か多数講和か論争があった。
小泉信三博士は、全面講和論、中立論に反対意見を表明。反対とい
うのは、それが出来ても望まないというのではなく、(全面講和は
「理想」であって、現実には)「出来ない相談」だ。現状、中立論
で平和を護ることは出来ない、と論陣を張った。
それに対して、全面講和を主張する者(とくに中野好夫氏)は、全
面講和が出来ないのであれば、占領の継続を望むとまで言ったので
ある。(小泉信三「平和論明暗」S27/5)
(注)当時は、昭和20(1945)年にソ連が日ソ中立条約を無視して
日本に宣戦布告し、満州、朝鮮に侵入、侵攻してから5年ほどしか経
っていなかった。


今日の国会論戦でも時々見られるが、ベターな提言をするならまだ
しも、また理想を持つのはいいが、ただ単にユートピアの立場から
現実を批判するのはよろしくない--というと、本書の紹介から少
々外れるかしらん(笑)。




服部龍二『高坂正尭--戦後日本と現実主義』
(中公新書、H30[2018])★★★★★


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