人生ブンダバー

読書と音楽を中心に綴っていきます。
現在は、暇に飽かして、日々更新。

(今月の新刊)椎根和『平凡パンチの三島由紀夫』(新潮文庫)

2009-10-06 05:21:53 | 読書
用賀の優文堂書店に「飛び込」んだら、「三島由紀夫」という文字に目が止まり、
本書を購入した。著者は昭和17(1942)年生まれ、早稲田大学卒業。雑誌の編集畑
で働いてきた人である。帯には「まだ誰も知らない、本当のミシマ。最後の三島担
当編集者が見つめたスーパースターの素顔」とあった。

解説は「『若者の言葉による三島へのオマージュ」として川本三郎が名文を寄せて
いる。
  なぜ三島は、自分に決行を語ってくれなかったのか。なぜ、切腹という現代人
 から見れば異常な決意の謎を自分に語ってくれなかったのか。
  椎根さんは、いわば、置いてけぼりにされた。自分の結婚パーティでスピーチ
 までしてくれた三島が最大の謎を、自分に教えてくれなかった。
  その悔しさが、実は本書の最大の美点になっている。普通、これだけ大作家に
 信頼された編集者の回想録なら、自慢話になりがちだ。いかに親しかったか。い
 かに可愛がられたか。相手はもう死んでいるのだから、いかようにも書ける。
  しかし、椎根さんは最後の最後で、思いとどまる。それをしない。三島由紀夫
 は自決した。自分は生き残り、平常な日常を生きている。なおかつ自決した作家
 の回想録を書いている。
  それはどういうことなのか。
  本書の素晴しさは、三島という大作家というより、一人の身近な人間の死に接
 した時、残された者は、どういう心の重みを耐えていけばいいかを「若者」の言
 葉で書きとめたことにある。

来年は早いもので三島由紀夫生誕85年、没後40年である。



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