「おすすめの100冊」に入るかどうか分からないが、昭和史の実証的な研究を進め
て来られた秦郁彦氏の『昭和史の謎を追う』(文春文庫、平成11年12月刊)をご紹
介する。
歴史は、「事実」と「解釈」である。(「解釈」は「史観」と言ってもよいだろう。)
当然ながら、「まずは事実ありき」、である。事実があいまいだったり、イデオロ
ギーによって、隠蔽(いんぺい)されたり、捻じ曲げられたりしてはならない。
個人的には、ザッハリッヒに「事実」9割、「史観」1割くらいのバランスがいいの
ではないかと思っている。数少ない事実で「史観」を振り回すのはよくない。
本書において、あらためて注目すべきは「柳条湖事件」である。(柳条溝は誤り。)
当時の公式発表は「昭和6年9月18日午後10時過ぎ、支那正規兵が柳条湖付近満鉄本
線を爆破」したので、関東軍が攻撃を開始したというものであった。いわゆる満洲
事変の勃発である。
これは東京裁判では今ひとつうやむやとなったが、事件当時から関東軍の謀略では
ないかという噂があった。(現在ではその実行犯が特定され、「事実」が確定して
いる。)その事実を追い求めた実証的研究が本書第3章「柳条湖事件の新証言」で
ある。
最近話題となった前・防衛省航空幕僚長の論文「日本は侵略国家であったのか」を
全文読んだが、なぜか柳条湖事件、満州事変には触れていない。
この論文に全面的に反対するものではないが、昭和史を語るとき、柳条湖事件、満
州事変を避けて通ることはできないのではないだろうか。
今月号の『文芸春秋』の巻頭言阿川弘之「『新・東京裁判』再読」を読んだが、そ
れには満洲事変からおかしくなったという趣旨のことが書かれており、同感であ
る。新聞も国民も熱狂してしまったのである。
私のブログ、8月6日でも取り上げたが、瀬島龍三『大東亜戦争の実相』にも昭和6
年9月18日のことはまことにさらっとしか書かれていない。→こちら。
こういうことは「史観」以前の重大な事実の問題ではないだろうか。そこに前幕僚
長論文の問題がある。
本書で秦郁彦氏はまとめている。「柳条湖事件は、今後も日本民族にとって、苦い
負い目として残ることだろう」と。
(注)ちなみに元東大総長林健太郎氏は「満洲事変は不戦条約違反」と歯切れがよか
った。
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