人生ブンダバー

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ヴァイツゼッカー『荒れ野の40年』を読む

2021-07-14 05:00:00 | 近現代史

すべて、一部の文章や発言を取り出して論評するのは問題がある
場合がある。

「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になる」は、
ヴァイツゼッカー元西独(~ドイツ)大統領の言葉である(1985
年5月8日連邦議会演説)。

ヴァイツゼッカーが2015年1月31日が亡くなった時だったか、
NHKの大越健介キャスター(10月からテレビ朝日の「ニュースス
テーション」のキャスターになるという。)もその言葉を引用し
ていたと記憶している。


上記「過去に目を閉ざす者は~」の一節は、当初は注目されなか
ったが、同年11月に『世界』(岩波書店)と朝日新聞がほぼ同時
に取り上げた。
(注)仮説だが、『世界』と朝日新聞はなにがしかの意図を持っていた?


しかし、この発言の前後の文脈をよく読まなければ、「薄っぺら
い」議論になる。

時間ができたので、まことに遅まきながら『荒れ野の40年』(岩
波ブックレット)の全文を読んだ。

そのかなり長い一部は、Wlikipediaで読むことができる(→こちら)。

さらに、上記を多少補って、一部を紹介すると・・・・・・
(< >は私が強調のために補ったもの)。

 われわれドイツ人にとって5月8日は、祝賀すべき日ではありません。この日
 を迎えたとき、もの心がついていた人びとは、きわめて個人的な、従ってき
 わめてさまざまな経験をしたことを思い出されるでしょう。


 大抵のドイツ人は国の大義のために戦い、耐え忍んでいるものと信じており
 ました。ところが、一切が無駄であり無意味であったのみならず、<犯罪的
 な指導者たちの非人道的な目的>のためであった、ということが明らかにな
 ったのであります。


 振り返れば暗い奈落の過去であり、前には不確実な暗い未来があるだけでし
 た。

 しかし日一日と過ぎていくにつれ、5月8日が<解放の日>であることがはっ
 きりしてまいりました。このことは今日われわれ全員が共通して口にしてい
 いことであります。<ナチズムの暴力支配という人間蔑視の体制からわれわ
 れ全員が解放>されたのであります。


 歴史の中で戦いと暴力とにまき込まれるという罪--これと無縁だった国が、
 ほとんどないことは事実であります。

 しかしながら、ユダヤ人という人種をことごとく抹殺する、というのは歴史
 に前例を見ません。


 この犯罪に手を下したのは少数です。公の目には触れないようになっていま
 した。

 戦いが終わり、筆舌に尽くしがたい大虐殺(ホロコースト)の全貌が明らか
 になったとき、一切何も知らなかった、気配も感じなかった、と言い張った
 人は余りにも多かったのであります。

 <一民族全体に罪がある、もしくは無実である、というようなことはありま
 せん。罪といい無実といい、集団的ではなく、個人的なものであります>。


 問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはあ
 りません。後になって過去を変えたり、起らなかったことにするわけにはま
 いりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となり
 ます。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥り
 やすいのです。

 ユダヤ民族は今も心に刻み、これからも常に心に刻みつづけるでしょう。わ
 れわれは心からの和解(フェアゼーヌング)を求めております。


三つに要約すると
○われわれも(1945年)5月8日にヒトラー、ナチスから解放され
 た。
○史上まれにみる、ユダヤ人の大虐殺(ホロコースト)は、ヒト
 ラーたち一部の人間が行ったことで、ドイツ人全体の責任では
 ない。
○われわれドイツ人はユダヤ民族に心からの和解を求めている。



ヴァイツゼッカー『荒れ野の40年』


ちなみに、
ニュルンベルク裁判、東京裁判では
a.平和に対する罪
b.通常の戦争犯罪
c.人道に対する罪
の容疑で、「指導者」が起訴された。
ニュルンベルク裁判では被告の多くがa、b、cで有罪となった。

東京裁判ではa、bで有罪になったが、c.人道に対する罪(ホロコ
ースト)では有罪になった者はいない。

ドイツのユダヤ人虐殺は、桁違いの犯罪?


ドイツは、東西に分かれていたこともあり(?)、国家として
「謝罪」は行っていない。
その代わり(?)、人道的見地から「(個人)補償」を行った。

(ご参考)→こちら


参考図書

西尾幹二『異なる悲劇 日本とドイツ』(文春文庫)→こちら


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○党員の処分:都ファは早く、立民は遅い。本多議員の妻も「身
内」に甘い?


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