本書は、いささか生々しいが、幻冬舎からの出版だけあって(?)、
文章も精緻で、個人的には、本年度のノンフィクション部門で「大賞」
に選びたいほどの力作だ。
新聞記者などは「番記者」といって、昔から一人の政治家に密着取
材する役割がある。
「密着」して、個人的な意見を述べているうちに信頼関係ができ、秘
書としてスカウトされる場合もある。
産経新聞の政治部記者から佐藤栄作の首席秘書官となった楠田實
などが有名だ。池田勇人の秘書だった伊藤昌哉も前職は新聞記者
だった。
山口敬之氏(元TBS政治部、今年50歳)の『総理』は、一日にして一
気に読んだ。
読みながら、上述のような、政治家と番記者の関係を思い出した。
--山口氏は安倍首相の秘書官にはならなかったが。
著者のプロフィールは、次のとおりだ。
1966年東京生まれ。フリージャーナリスト・アメリカシンクタンク客員
研究員。90年慶應義塾大学経済学部卒、TBS入社。以来25年間
報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン
支局、社会部を経て2000年から政治部。13年からワシントン支局
長を務める。16年5月TBSを退職。(本書より)
<目次>
まえがき
1.首相辞任のスクープ
2.再出馬の決断
3.消費税をめぐる攻防
4.安倍外交
5.新宰相論
あとがきにかえて
山口氏は、政治家、とくに安倍首相の懐に飛び込み、「信頼関係」を
築き、平成19(2007)年9月の首相辞任をスクープしている。
--本書、p56~57の記述からは、当時の緊迫感が伝わってくる。
事ほど左様に、永田町、首相官邸が垣間見えるノンフィクションだ。
著者は、TBS時代、取材対象に近すぎると批判されることもあった
ようだ。
中には、「こんなことまで書いてしまって大丈夫かしらん」と思えるも
のもあるが、モノによってはむろん事前に了承を得ているに違いな
い。
本書で読むうちに思い出したが、民主党外交の「失敗」も具体的に述
べられている。
個人的な意見だが、それに比べると、「安倍外交」(安倍首相一人で
はできないが。)は、諸国訪問、伊勢志摩サミット、オバマ大統領の
広島訪問等々かなり成功しているのではないかしらん。
(外交はあまり票に結びつかないが、非常に大切なことだ)。
ちなみに、山口氏は、「ベトナム戦争当時の韓国軍慰安所の存在を
指摘するアメリカの公文書」を明らかにする報道をTBSでは行えず、
週刊文春に発表している。
--「報道の自由」を掲げるマスコミには(会社方針に反する)「報
道の自由」がない?
山口敬之『総理』(幻冬舎)
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