またまた、1年前の話。2019年1月25日の朝6時ごろ、石垣島アパート三階のベランダから撮影した東の空に、わし座のアルタイルが見えたことに感激している。1月中に、全一等星21の撮影に取り組んで、アルタイルが最後の星だったからである。
撮影したのは、朝6時29分、当日の夜明け1時間前ということで、東空がどんどん明るくなって星が消えていく状況の中で、スレスレセーフだった。1年後に、当時の写真を見て、あらためて当時の歓びがよみがえった。あらためて、写真を取り出して、ささやかな幸福をかみしめたい。
国立天文台「今日のほしぞら」石垣島2019.1.25午前7時 もう明るい。
あらためて星図を引いて、アルタイルであることを確認。
昨年来、宮沢賢治にはまり、関連する書籍や動画などを毎日のようになぞっているが、昨日、Youtubeで青風マヲさんの素晴らしい朗読動画「銀河鉄道の夜」を楽しんでいたら、【5.天気輪の柱(てんきりんのはしら) 】で止まった。
「ええと、てんきりんって何だっけ てんきりん、てんきりん」。天気輪が、賢治の造語であって、現実の固有名詞でないことは知っていたが、これほど国民的ファンタジーの地位を占めた作品であることから、すでに研究者により解明され、意味するところが定説としてゆるぎないものと思っていた。ところが、原子朗著「定本宮澤賢治語彙辞典」2013年初版(筑摩書房)を引いたら、驚いたことに「諸説紛々」だった。
① 仏教の五輪塔(有力説)
② 極地の太陽柱(根本順吉説)
③ 法華経による宝塔賛美(斎藤文一説)
④ 人間の死に至る回路のシンボル(別役実説)
等々。
「そうか、ならもっと自由にイメージしても、だれにもとやかく言われないんだよね。」という気持ちになっていたところ、今読ませていただいている「宮沢賢治 イーハトヴ自然館」の(異稿 童話『ポランの広場』)の「天の川がXという字にぼんやり白くかかっていた・・」というくだり、が閃いた。天の川に交錯するXについて、写真の解説では、それが日没に西の空に現れることがある黄道光(こうどうこう)という光の柱であるとのことであった。
北から南に流れる天の川には、西から黄道光が天頂に伸びていけば、到達することができる。別役説の回路のイメージだ。
それと、年末に展覧会で観たゴッホ晩年の「糸杉のある風景」の糸杉(サイプレス)。あの絵画の説明でも、糸杉のシンボルとするところはイメージしていたが、ちょうど、加入したばかりの「宮沢賢治学会イーハトーブセンター会報 第59号」にSさんという方の投稿エッセイには明確に、ゴッホの「星月夜」は、「ジョバンニが天気輪の丘でみた心象風景と同じ星空だ。」との記載があった。さらに、キリスト文化で、「生命、豊穣、死、死後の生命、不死、復活」の象徴とされるサイプレスが、賢治の心象で「天気輪の柱」と姿を変えたとしている。
そういうことなんだよね、天気輪の柱とは、天文的には黄道光、西洋的風景ではサイプレスをイメージした賢治の心象風景にあるピラー。天気輪の柱とは、「地球(気層)と天空(宇宙)、生と死、今と永遠、現実と夢というステージを自由に行き来できるエレベーターのようなもの」と考えればいいんじゃないか。
さて、そんな何となくのイメージで、青風さんの、Youtube朗読、後半にまいりましょう。
青風マヲ さんの朗読作品