青葉の森でエゴノキやハクウンボクなどエゴノキ科の白い美しい花が終わる季節、エゴノキはそろそろ白いまんまるな実をつけようとしている。
ハクウンボクの花(先週)
花が終わると実がふくらみ始め
白い実が垂れ下がっている今日のエゴノキ
ハクウンボクは、ブドウの房のようにたくさんの実をつけるのだというが、エゴノキはサクランボのように一個から数個の身をたらしている。
そんなエゴノキを下からのぞいていると、なにやら葉っぱが半分から切り取られ、切り取られた葉っぱがくるくると葉巻状に丸められブラブラと釣り下がっているのを散見できる。
ちょつと調べてみたらオトシブミという甲虫のなかまで、この虫は種類によっていろいろな木の葉をこのように丸めて中に卵を産みつけ、孵化した幼虫はこのおうちのような葉を食べながら成長するのだという。
そして、今日出会ったエゴノキやハクウンボクにあの葉巻のようなおうちを作るのは、首がツルのように長い「エゴツルクビオトシブミ」という仲間によるものらしい。
今日は、そのおうちの周囲を少し調べてみても、その昆虫は見つからなかったが、なんでも♀は「花が咲く前に」はやくもこのおうちを作って中に卵を産みつけているのだという。
そしてこのおうちのことを図鑑では「揺籃」と言っており、つまり幼子のための「ゆりかご」と表現している。なんともメルヘンチックな表現ではないか。まさに産み付けられた卵や孵化した幼虫は、この風が吹いたらゆらゆら揺れそうなゆりかごのなかで育つという具合だ。
なんでも、オトシブミの仲間にはこのエゴノキのように葉にゆりかごをくっけたままにしておく仲間と、ゆりかごを最後にはチョッキンと切って地上に落とす仲間があって、「オトシブミ=落とし文」という名は、後者の仲間の行動から名付けられたというが、絶対に前者の方が快適で安全そうだが、いかがなものか。
それにしても、「落とし文」といい「揺籃」といい、日本の(多分和訳ではないだろう)学者たちは文学的素養も備わっていたように思える。
ぜひ、このメルヘンチックなゆりかごの作り手の成虫たちに面会したいと思うのだが、成虫の命は1年以内だという。大方の昆虫のように、親たちは彼らの新しい命がこの世界に現れるころには、もうこの世界にはいないのだろう。そんなことを思うと、小さな虫たちにも世の儚さが思いやられ、憐憫の情というものがわいてくる。
今日の青葉山では、夏鳥たちには出会えなかったが、新しいチョウの仲間に出会った。
地味な翅裏で、「タテハチョウ科コジャノメ」とよく似ているが「タテハチョウ科クロヒカゲ」のようだ。食草と言われるササの葉にとまっているから、卵を産みたがっている♀なのだろう。
ヒョウ柄の表翅でタテハチョウ科〇〇ヒョウモンのなかまだろうが、翅の下の黒さからツマグロヒョウモン♂と同定したい。