川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

大崎博澄さん

2009-10-01 15:16:17 | こどもたち 学校 教育
 今日は10月1日です。夕べのうちに娘が新しいパソコンを使えるようにしておいてくれました。ノートパソコンにはかわりがありませんが画面が大きくなり利用しやすくなりました。体調も回復してきましたのでまたまた駄文をつづることができそうです。

 9月26日(土)大崎博澄さんが講演をされるというので明治大学に行きました。「開かれた学校づくり」全国交流第10回記念集会の冒頭で記念講演をされました。
 「子どもという希望 土佐の教育改革と私」

 大崎さんが高知県教育長として取り組んできた「土佐の教育改革」について総括と展望を語るものですが70分間僕は身じろぎもせず耳を傾けました。緊張感のみなぎる心のこもった講演だったのです。

 この改革運動は失敗だったとしてその原因を明らかにし、今後の課題に言及されました。僕は「土佐の教育改革」についてほとんど何も知りません。橋本大二郎知事のもとで「開かれた学校づくり」運動が10年近く展開されたらしいというだけです。大崎さんはその2年目くらいから教育長となり、責任者として全力を投入して運動を導いていきました。その運動が失敗だったというのです。

 メモをとるということをしない僕のことですから講演の内容を紹介することはできません。いずれ発表されるでしょうからそれをご期待ください。

 僕の印象に残ったことは自分が主導した運動の失敗をはっきりと認め、その原因を解明し、未来に生かそうとする誠実で熱い思いがそこに満ちていたことです。

 失敗や誤りを認めることは私たちただの人でも容易なことではありません。あれこれの成功例をあげて何とかごまかそうとしがちです。大崎さんは教育行政の責任者です。あちこちの学校であげた成果を紹介して胸を張ることもできるのかもしれないのです。しかし、それらの優れた実践は「突然変異」であり、誰が校長であってもできたといえなければ成功とはいえないといいます。

 改革の目的は子どもたちが行きたい、子どもたちが楽しいと思える学校を作ることです。このことなしに「学力の向上」などということもあり得ません。この究極的な目的を実現するために「ひらかれた学校づくり」が全県的に繰り広げられたのですが成果は乏しかったというのです。学校はなかなか変わらなかったということでしょう。

 僕には全県下の学校を「子どもたちが楽しいと思える学校」につくりかえようとした教育長がいたということが奇跡的なことに見えます。そしてそれがうまくいかなかったといってその責任を自ら明らかにしようとしているのです。
 
 ぼくは40年も教員をやって大崎さんと同じような願いを持って仕事をしてきたつもりですが、一つの学校はおろか一つの学級もそのその目的に近づけたとはいえません。それでも、定年になってまあまあ精一杯やったか、と自足しているところがあります。

 大崎さんは教育長ですから責任の大きさが違うのかもしれませんがその総括の厳しさに頭が下がります。職を解かれた後も大崎さんを慕う人々から届く子どもたちの声にならない声が大崎さんの心を揺さぶり続けるからでしょうか。いじめ、不登校など、げに学校は何一つ変わってはいないのです。

 講演が終わって挨拶したのですが一瞬僕は言葉を発することができませんでした。困難な課題に挑戦する大崎さんの誠実な生き方に感動して胸がいっぱいになったのです。

 勝義さん、精さん、妻と4人で大崎さんを東大前の「馥苑(ふうえん)」に誘って夕方まで交流しました。誰もが初めて会う人同士です。大崎さんは同じ時代を生きてきたとはいえ僕には想像することさえ困難な人生を歩いて自己を確立してきた方です。過去と現在をオープンに語る大崎さんに触発されて誰もが心の扉を開いて交流します。

 大崎さんからメールが届きました。

 いやいや、東京では大変お世話様になり、ご馳走になり、ありがとうございま
した。鈴木さんにお会いできたこと、お話を聞いていただき、お聞きすることも
できたこと、本当に嬉しいことでした。
 (略)
 ついつい肩に力が入りすぎる性格ですが、ぼつぼつブレーキも踏みつつがんば
ります。
 また、高知で再会できればと願っています。ああ、感謝(コニヤン風)


 かつて「こういう知己を得た(?)ことをぼくは生涯の誇りとするでしょう。」と書いたことがあります。

 必読・大崎前高知県教育長講演記録http://blog.goo.ne.jp/keisukelap/e/2d6a3e2b9a7b52e84d86642f10bb4074

 今、実際にお会いして「知己を得た」喜びをかみしめています。これからは本当にぼちぼちやってほしいものです。大崎さんを応援する実業家の協力で来春には高知市のど真ん中に「たんぽぽ教育研究所」がオープンする運びだとか。子どもが行きたいという学校を作る草の根の市民のよりどころになっていくことでしょう。