【仲間の「オカオグルマ」は乾いた草原に自生】
キク科キオン属の多年草。日本固有種で、北海道を除き本州から沖縄にかけて広く分布する。日当たりのいい山間の湿地を好む。花期は4~6月ごろ。属名のキオン(黄苑)が示すように、高さ50~80cmの直立した茎の上部に直径3~5cmほどの黄色の花をいくつも付ける。
名前は「沢に生えるオグルマ」から。オグルマはキク科オグルマ属の湿地性多年草で、縁を切りそろえたように花びらが放射状に広がることから「小車」と名付けられた。花はタンポポに似ており、サワオグルマに比べると少し小さく草丈もやや低い。こちらの開花時期は7~10月と夏から秋口にかけて。
サワオグルマの葉や茎はヨモギのように細くて白いくも毛で覆われる。学名「セネシオ」はラテン語で「老人」を意味する「セネクス」に由来する。ということは、学名もくも毛からの連想による命名だろう。若葉や茎、つぼみなどは食用として、てんぷらや和え物、炒め物に。同じキオン属の近縁種「オカオグルマ(丘小車)」は名前の通り乾いた草原に自生し、葉や茎にくも毛がない。分布域も日本のほか朝鮮半島や中国、台湾など広い。
サワオグルマの群生地では福井県敦賀市の中池見湿地や滋賀県の余呉湖東岸、長野県大町市の居谷里(いやり)湿原、白馬村の親海(およみ)湿原などが有名。中池見湿地は100種を超える絶滅危惧種を含め約3000種に上る動植物が生息、その生物多様性から2012年、ラムサール条約の登録湿地となった。サワオグルマも全国的には湿地の開発などで自生地は減少傾向。東京では既に絶滅したとみられ、愛知や高知など11県でも絶滅危惧または準絶滅危惧種に指定されている。