【世界に誇る日本原産の香辛料、学名「ワサビア・ジャポニカ」】
ワサビは日本原産で、世界共通の学名も「Wasabia japonica(ワサビア・ジャポニカ)」と命名されている。寿司や刺し身など和食文化の国際的な広がりの中で、ワサビは日本が世界に誇る香辛料に。最近では台湾や中国、タイ、ニュージーランド、北朝鮮など海外での栽培も盛んになってきた。日本産ワサビは西洋ワサビ(ホースラディッシュ)と区別するため「本ワサビ」とも呼ばれる。
冷涼な気候と清流を好む。花期は3~4月ごろ。花茎の先に同じアブラナ科のダイコンに似た白い十字形の小花を付ける。ワサビは古く奈良時代の文献にも見え、平安時代初期に編纂された日本最古の薬物事典『本草和名』にも登場する。それによると、丸くて大きい葉姿がアオイ(葵)に似ることから漢名で「山葵」と表記されるとし、和名には「和佐比」を当てている。
ワサビが刺し身に添えられるようになったのは室町時代の中頃。江戸時代に入ると、寿司やそばの一般大衆化によって広く利用されるようになった。ワサビの栽培も江戸時代の前期に駿河(静岡県)の安倍川上流域で始まった。今もこの静岡をはじめ長野、山梨、島根などが国内の主要産地となっている。
ツーンと鼻に抜ける辛味の主成分はアリルカラシ油と呼ばれるもの。強力な抗菌力で知られるが、近年の研究でこの成分に細胞や組織を傷つける酸化ストレスへの抵抗力を高める働きがあることが判明、老化防止や病気予防効果も注目を集めている。ワサビの花は静岡県伊豆市や長野県安曇野市の「市の花」。安曇野の人気スポット「大王わさび農場」では4月12日まで「わさびの花の収穫祭」が開かれ多くの観光客でにぎわった。「透き水のさざめき通る山葵沢」(桂信子)。