【和名「浅黄水仙」、八丈島や種子島が切り花・球根の主産地】
アヤメ科フリージア属の球根植物。原産地は南アフリカのケープ地方で、1810年代にヨーロッパに初めて紹介された。人々は香りのいい清楚なこの花に熱狂し、その後、英国やオランダを中心に盛んに品種改良が進められた。その結果、花色は白や黄のほか紫、紅、桃、橙など豊富に、花容も一重や八重、小輪や巨大輪など多彩になった。
花期は3~5月ごろ。花茎の先が弓状に曲がり、5~10個の漏斗状の花を上向きに付ける。葉は先が尖った剣状。草丈はふつう30~40cmほどだが、温室で栽培される切り花用の品種は花軸が直立し、高さが1mを超えるものも。白や黄系統の花は芳香を出すこともあって根強い人気を保っている。
属名のフリージアの語源には英国人の植物学者に因むといった説もあるが、ドイツ人医師フレーゼの名前に由来するという説が有力。それによると、南アフリカでこの植物を見つけたデンマークの植物学者が、親友のドイツ人の名前を学名に使ったという。和名は浅黄色でスイセンに似ているとして「アサギスイセン(浅黄水仙)」。ただ、その名で呼ばれることはほとんどない。
日本では明治時代の後半になって小笠原諸島で球根の栽培が本格化した。今では八丈島や鹿児島の奄美大島、沖永良部島などが主産地となっている。切り花主体の八丈島では今年3月21日から4月5日まで「第49回フリージアまつり」が開かれた。種子島は年間球根生産量が約1600万個にも上る「日本一の球根生産地」。5月に入ると球根の収穫が始まり、乾燥して出荷する。「フリージアのあるかなきかの香に病みぬ」(阿部みどり女)。