【永田和宏著、岩波書店発行】
歌人で細胞生物学者(京都大学名誉教授)でもある著者が独自の視点で「今後100年読まれ続けてほしい」と願う戦後の歌人100人の100首を選んだ。2013年出版の「近代秀歌」の姉妹編。関連する短歌も多く収録しており、それらを含めると優に250首を超える。第1章の「恋・愛」から第10章の「病と死」まで10章で構成。各章から1つずつ挙げると――。
「恋・愛」―河野裕子『たとへば君ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか』▽「青春」―寺山修司『海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり』▽「新しい表現を求めて」―奥村晃作『次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く』▽「家族・友人」―島田修三『立つ瀬なき寄る辺なき日のお父さんは二丁目角の書肆にこそをれ』▽「日常」―高瀬一誌『うどん屋の饂飩の文字が混沌の文字になるまでを酔う』
「社会・文化」―道浦母都子『ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いゆく』▽「旅」―佐藤佐太郎『冬山の青岸渡寺の庭にいでて風にかたむく那智の滝みゆ』▽「四季・自然」―山中智恵子『三輪山の背後より不可思議の月立てりはじめに月と呼びしひとはや』▽「孤の思い」―浜田到『死際を思ひてありし一日のたとへば天體のごとき量感もてり』▽「病と死」―上田三四二『死はそこに抗ひがたく立つゆゑに生きてゐる一日(ひとひ)一日はいづみ』