【本州中部以北に分布、名前は歌舞伎『伽羅先代萩』から】
主に本州の中部から北海道にかけて分布するマメ科センダイハギ属の多年草。太い地下茎を伸ばして海岸の砂地や草地に群生することが多い。ハギ(萩)は秋の七草として知られ花期はふつう秋だが、この花は春から初夏にかけて咲く。高さ40~80cmの花茎を立ち上げ、マメ科の特徴でもある蝶形の黄色い小花を多数付ける。一見ルピナスの黄花のようにも。秋になるとササゲのような細長い鞘の実ができる。
名前は北国に多いハギということから、歌舞伎・浄瑠璃の『伽羅(めいぼく)先代萩』に因んで付けられたという。この演目は江戸前期に先代伊達家で起きた内紛「伊達騒動」に題材を取ったもの。ただ先代萩のほか仙台萩や千代萩と表記することもあるようだ。江戸前期の植木職人、伊藤三之丞(伊兵衛)が著した『花壇地錦抄』(1695年)では「仙臺萩」として「花形、大豆の花ニにて色うこん」などと紹介されている。
別名「キバナセンダイハギ」。これは北米原産で花の姿がよく似て青紫色の花を付ける別属のムラサキセンダイハギ(上の写真)と区別するための呼称。また、よく似た黄花に家畜の飼料や緑肥として利用されるシナガワハギ(品川萩)がある。センダイハギは北海道東部に位置する別海町の「町の花」になっている。野付半島(日本の秘境100選)の竜神岬周辺に自生し、根室管内で唯一の群生地であることから指定された。野生種は減少しており、富山、茨城両県では既に絶滅したとされ、宮城や山形、石川などでも絶滅危惧種になっている。(写真は奈良県明日香村の橘寺で)