【アブラナ科の多年草、農作業の目安となるタネツケバナの仲間】
アブラナ科の多年草で、日本をはじめ朝鮮半島、中国、シベリア東部にかけて分布する。山地や谷川沿いなどの半日陰の湿地を好む。花期は4~6月頃で、直立した茎の先に十字状の白い小花を多数付ける。草丈は30~70cm。根元から茎を横に伸ばして広がり、しばしば群落をつくる。
磯野直秀氏の「資料別・草木名初見リスト」によると、コンロンソウが初めて文献に登場するのは江戸中期の『地錦抄附録』(伊藤伊兵衛政武著、1733年刊)。漢名は「白花碎米薺(はくかさいべいせい)」または「白花石芥菜(はくかせきかいさい)」で、和名の「崑崙草」はわが国で命名されたようだ。ただ、その由来ははっきりしない。よくいわれるのが牧野富太郎説で、白い花を中国西部にある崑崙山脈の雪にたとえたというもの。これに対し『山渓名前図鑑』(山と渓谷社刊)などの著者、高橋勝雄氏は黒褐色の実に着目し、住人が褐色の肌色をしている南海の伝説上の島国・崑崙国から来ているのではないかと主張する。
コンロンソウはタネツケバナ属の一種。タネツケバナは種漬花で、この花の咲き始める頃が苗代にまく種もみを水に漬ける目安になっていることによる。コンロンソウの変種にはミツバコンロンソウやマルバコンロンソウなどがある。ミツバは文字通り葉が3小葉からなる。マルバは小葉の形が円形または卵形。マルバコンロンソウの変種オオマルバコンロンソウは環境省のレッドリストで「絶滅危惧ⅠB類」に指定されている。